第3回 現場発信型英語教育研究会(COREE 3)を2025年12月6日(土)に開催しました。今回は「専門家でない私が試した『教えない英語習得』〜『話すだけ』でどこまでいけるのか」というタイトルで、百渓 江 先生(山口東京理科大学)にご発表いただきました。
百渓先生は医薬学をご専門とし、高校卒業後に大学からアメリカへ留学、アメリカで大学院を修了し、そのままアメリカで研究・教育のキャリアを積まれた後、現在のご所属に着任されています。ご発表では、先生がご勤務校で実践されている課外英語活動について、これまでの取り組みと成果をご紹介いただきました。

「教えない」ことを軸にした英語学習支援
百渓先生の活動は、ご自身が英語を話したい学生の相手をする英会話練習から始まりました。その後、学生の増加に伴って活動は拡大し、現在では語学エクスチェンジ・プログラムを主催されるまでになっています。
語学エクスチェンジでは、アメリカで日本語を学ぶ学生と、山口東京理科大学で英語を話したい学生をマッチングし、オンラインで継続的に交流する機会を提供しています。興味深い点は、いつ・どのくらいの頻度で話すかなど運営の多くを学生に任せ、教員の介入を最小限にしていることです。先生は必要に応じて進捗確認をする程度で、「学生が勝手にうまくなっている」と表現されるように、自律的な学習が自然と進む仕組みが作られています。
一方、入学直後など基礎力の不足が予想される段階では、毎日、集中的に練習を行い、コミュニケーションに必要な表現を徹底的に習得させるなど、初期支援は丁寧に行われています。基礎固めは手厚く、自律化は大胆に任せるという方針が全体の特徴といえます。
自主性を重視した大学院進学支援
将来アメリカの大学院進学を希望する学生に対しては、教授へのアポイントメント取得から研究室訪問までのプロセスを、できる限り学生自身に任せているとのことでした。これもまた、学生が主体的にコミュニケーションを取り、自ら道を切り開く姿勢を養う意図があります。
取り組みがもたらした成果
こうした継続的な活動は確かな成果を生み、これまでに学部時よりアメリカ開催の学会での口頭発表、海外からの公式訪問団の通訳、アメリカ大学院博士課程に現役合格、国連ウィーン事務局で開催された麻薬委員会で英語スピーチを行う学生を輩出するなど、高い実績へとつながっています。
質疑応答より:多くの学生を巻き込む鍵とは?
参加者からは「これほど多くの学生が課外活動に参加する理由は何か」という質問が寄せられました。これに対して百渓先生は、ロールモデルとなる学生をいかに育てるかが鍵であると述べられました。先輩学生の姿が後輩の参加動機を高め、活動の継続的な発展につながっているとのことです。
日本の大学において「英語を使える学生」を育てることの重要性が高まる中、百渓先生の取り組みは、学生の自律性を生かした英語教育の新しい可能性を示すものでした。
